特集:ハロー!!新生活。
皿山ごはん – そうた窯(後編)-
伝統的な染付技法をいまに伝える有田焼の窯元として今年で22年目を迎えるそうた窯。インタビュー前編ではその歴史と娘の千佳さんがUターンで戻ってくるまでのエピソードを聞くことができました。
取材スタッフと雑談を交わしながら直哉さんも千佳さんも揃いのお弁当でお腹を満たした後は、好きに見ていいよと言われた工房内をおふたりと一緒になって案内してもらうことに。ガラス戸で仕切った工房の奥には大きさの異なる複数のガス窯が整然と積み上げられた素焼きの器を前に今日もその出番を待ちます。その傍らでは直哉さんが手ろくろで引いた作りかけの大皿や鉢のほか、たくさんの試作サンプルがところ狭しと並んでいて、ふだんは気さくな直哉さんの職人としての絶え間ない創作活動の一端を目にすることができました。どの作品にもそうた窯としてのアイデンティティーが込められていて、丁寧な説明の端々に直哉さんの熱もこもります。では、その姿を幼いころから間近で見てきた娘の千佳さんはこれからのそうた窯をどうイメージしているのでしょうか。
「手づくりとか手描きとか、自分たちがこれまで培ってきた伝統技術を守っていく、それはこれからも続けていきたいですね。それがそうた窯の強さ、良さだし、それをお客さまも分かっていらっしゃるから。その部分はこれからも変わらずアピールしていくのはとても大事なことだなと思っています。父が20年やってきてそれなりに名前は知られてきたと思うけど、まだまだこれから。私が戻ってきてからのこの2年で少しずつお客さまと直接触れ合う機会を増やしているのですが、何年も展開している絵柄を初めて見たというお客さまや、そうた窯のことを全然知らなかったというお客さまもまだまだ多いのが現状。毎回売り場を変えるたびに買ってくれるのは新しいお客さまがほとんどで、これいいですね、初めて見ましたって言って買っていただくことが多いんです。だからもっともっと自分たちの良さをアピールしていけば欲しいって手にしてくれる方がいると思うから、そういう機会は積極的に増やしていきたいなと思っています」
オンラインやSNSなど、発信や販売も含めた消費者とのコミュニケーションツールには困らない時代。その流れに合わせて直販を伸ばしていく方向に徐々にシフトしていくんですか?という質問に千佳さんは続けて答えます。
「オンラインやイベント出店に力を入れて直販を伸ばしていくこともできるとは思うんです。でも私としては繋がりがあってこその地場のメーカーだと思っているから、その立ち位置を大事にしたいというのもありますし、自分もそっちの方が好きなんですね。いろいろな方とあれがいいとか、これどう思います?とか、そういうコミュニケーションを図りながらお客さまに喜んでもらうものを一緒になって作っていく。直販は売りたいからとか儲かりたいからって理由ではなく、あくまでも自分たちを知ってもらう機会を作りたいから。これまで培ってきた商社さんとの関係性やこれからできる新しい関係性も含めて、バランス感覚を大切にしながらひとつずつ前に進んでいきたいと思っています」
メーカーと商社それぞれに良さと持ち味があるという千佳さん。海外の販路開拓も視野に入れ、ちょうど動き始めたばかりと次々と新しい風を吹き込んでいるようです。
「あれをしたい、これをしたいって明確な目標があるわけではないんです。日々模索して試行錯誤を繰り返しながら、いろいろなチャレンジをとおして得た感触を次のアクションに繋げていくってそんな感じです。これまでの伝統や技術はきちんと守って、さらに発展させていくのが大前提っていうか、それができてこその自分たちですから。そのベースのうえに卸はもちろん、オンラインや直販、海外展開などいろいろな販売形態を作っていければなって思っています」
これからはもっと異業種とクロスしていくと思うし、そこに自分たちの時代にはなかった新しいおもしろさがあるんじゃないかなと直哉さんも続けます。
「問題もたくさんありますけどね。笑 でも壁もあるけどおもしろいような変化もあるし、これからが楽しみなんです。同世代もいるし、考えたことがそのまま形にできる環境にいる、それだけできっと恵まれているはずだから」
いま目の前のことを大切に日々仕事に取り組む千佳さんの姿勢は私たちも見習いたいところばかり。これからのそうた窯の展開もとても楽しみです。では最後に、せっかくの親子共演ということもあり親子ならではのエピソードはありますか?
「父は多趣味が過ぎるんです。クルマにバイク、飛行機にスキューバダイビング、ギターにアマチュア無線まで。やるとなったらとことんだから、家族としては困っています。笑」
とはいっても、そういう私も少なからず父から影響を受けていますけどね。男っぽいとかハマりやすいとかではないですけど、学生時代にギターやったりとかいろいろ、性格の地盤になっているのは間違いないです。ちなみにそのときのギターとアンプはいま父の部屋にあるんですけど。やっぱり、どこまでも困ったオヤジですね 」(一同笑)
(は)
写真: 中島紳一郎
>>皿山ごはん – そうた窯(前編)-
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